早慶合格した先輩たち~③~

彼を一言で言うと「お調子者」なのだろうか。

見た目はとても真面目そうではあるけれど、とことん面倒くさがり屋さんだった。

鞄の中は整頓されず、忘れ物なんかもしばしば。

親の目からすると「だらしのない子」だったり、「中学生らしくない」と映っていただろうか。

そんな彼は、その年で2人しかいなかった「早慶含め、受験全勝」を輝かしい栄光を得ることになる。

 

彼は小学生のころから通塾していた。

小学生の時からおしゃべりは大好きだった。友達と話しているときは何とも楽しそうな。

彼は容量のいい子だった。

「楽をする方法」を考え、あの手この手を使ってきた。

一番衝撃を受けたのは中3でのある時、教科は国語だっただろうか、どこかからか問題集の“解答”を用意してきて、解答をそれらしく書き換えてあたかも自分がやってきたように見せかける。。。

もちろん、それは“バレた”わけだが、、、

わが子がそんなことをしていたと知ったら、、、親の気持ちが思いやられますね💧

 

数学では、解き方を教えてもなるべく覚えたく(復習したく)はない。だから、自分で考え、それらしき解答を出す。

数学ではプリントの課題で、正解だったものは直しを課題としていなかったので彼も必死に正解を出そうと頑張っていた。

(プリントで年によって問題をいじるため、解答の入手はほぼ不可能(笑))

彼には、算数の時から光るものを感じていた。

というのも、「ずる賢さ」は見方を変えると「考える力がある」という風にも言える。

勉強に数学にその力が向いてくれれば、強い数学を身に着けてくれるのではないか、と。

その実、彼は算数も数学も得意科目にしていた。

  

さて、中1になると彼は一応、上位のクラスに入ることとなる。

彼の武器は数学。やはり発想力が強い。

彼の近くには、数学のスペシャリストもいた(のちに駿台模試数学全国1位を取る)。

休憩時間なんかには分からなかった問題を聞き合いっこをしていたようだ。

中1は基礎的な事から仕込んでいくので、彼も大きなプレッシャーもなく、順調そのものだった。

根が素直な所もあり、後に苦手としていた英語もコツコツ頑張り、総合でクラスの中堅どころに座していた。

 

中2に入って少ししてからだろうか。

このあたりから雲行きが怪しくなってきた。

もともと「楽をしたい」子なのだ。

中2で最初の駿台模試では英語の偏差値60を越えていたものの、徐々に下がってくる。

英語は、「努力」が非常にものを言う科目だ。(もちろん、他の教科も努力は大事だが)

英語の点数は勉強時間・使用したノートのページ数に比例すると言ってもいいくらいだ。

彼の英語は、どんどん沈んでゆき、中3に入るころには、偏差値50前後をうろうろするくらいになった。

 

中1中2で英語を固められると、強い。

中3で総合的になる数学を一気に伸ばす余裕が出来る。

どんどん下がる英語に、親の心配・不安が大きくなる。。。

 

彼は飄々としたもので、頑張る様子は見せるものの、なかなか本気の本気が見えてこない。

英語が順調に下がっていく中、数学は何とか得意科目の体裁を保っていた。(と思う。)

とはいえ「楽をしようと手を抜く≒解き方が定まらない」という面もあり、彼の数学の成績はまるでジェットコースターのようであった。

私の指導の経験則(他塾ではどうかは知りません)で、中2で駿台模試の偏差値60を一度でも越えた生徒は、だいたい中3での数学力は非常に強くなる。

彼は、その学年での数少ない中2で数学“偏差値60オーバー”の生徒だった。

中2での2回の偏差値は…50と60。うむ。なかなか振れ幅があるな。

中3での偏差値?もっとすごい。その差は最大で33!(笑)

なんと偏差値40~70を行ったり来たりするんだからこちらも困る!

 

とはいえ、彼の持ち味は自由度の高い解き方。それは誰でも出来るものではない、彼の強さでもあった。

欲を言えば「基礎」の大切さに気付き、解き方を「基礎」から組み立てる緻密さがあればと…何度思った事か。

 

転機が来た。

中3の冬。

なぜか、彼の目が変わったのだ。

それまでなるべく勉強を少なく済ませようとしてきた彼が、猛烈な勢いで勉強に取り組むようになったのだ。

12月~2月受験終了の期間限定だが、彼は、周りのどの生徒よりも長く勉強に取り組み、課題も誰よりもこなしてきた。

彼の目が、完全に勉強に向かっていた。

これまで「少ない時間で要領よく」だったものが、「何が何でも身に着ける」という徹底した勉強に変わったのだ。

それは「猛烈な」勉強の様子だった。

 

彼の英語は、11月までにだいぶ悲惨な所まで来ていた。クラスでも下から数えた方が…

しかし、11月以前と12月以降で比べてみると、偏差値が10以上も伸びているのだ。英語だけで。

英語は時間がかかる。自分が頑張っても、周りも頑張るから差を詰めるのは大変だ。

彼は、「勉強をゴリ押した」。

数学はジェットコースターは最後まで続いたが、平均高度がこれまた上がった。

最後のテストでは、駿台模試1位を取った生徒を押さえてクラスぶっちぎりの1位を取る。

国語は最後まで苦労したものの、下限値が上昇し、大失敗がなくなった。

 

彼の力を考えると、

数学で大きなアドバンテージを取り、英語で負けない戦いをし、国語を踏ん張れば、、、勝てる。

こんなことを思っていただろうか。

正直、最後の数値だけを見れば「合格」は現実的なものに思えるのだが、それまでが大変だったので心配もありはした(というか、とても心配した)。

 

入試本番が来た。

彼はやれるだけはやったし、受験会場に行くまでは友達と談笑するなど、緊張した面持ちは見られなかった。

なぜだろう。。。彼はもっと緊張すると思っていた。

彼は力を出し切り、慶應に合格した。

その他の受験日でも全勝を飾り、最高の結果で受験を締めくくる。

 

それにしても、

なぜ、目の色を変えて勉強したのだろうか。

なぜ、頑なに受けませんと言っていた慶應を受験する気になったのだろうか。

なぜ、受験本番でああも余裕を持てていたのだろうか。。。

 

 

彼は本当に謎が多かった。

後日、その理由が判明した。

 

「私の言う学校に合格したら、お小遣いあげるわよ」

 

・・・彼を動かしたのは魔法の言葉だった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

こんなのは、親にしかできない!!

わが子を知り尽くしている親にしかできない!!!

というか、そんなところにやる気スイッチもってたのか!!

いや本当に・・・受験って、何が起きるか分からないものですね。

お父さんお母さん、最後の最後まで、何が起きるのか分からないのが受験というものです。

積むべきものは積んでいないと、一気に成績が上げるのはなかなか難しいです。

「やる気がない」「いつも遊んでいる」ように見えて、積むべきものが積まれていれば、

どのタイミングかに、一気に開花するかもしれません。

最後まで頑張ろう受験生。自分を信じて突き進め!

最後まで見守ろう保護者のみなさん。何がきっかけでやる気になるかは、いろいろ試してみないと分からないものですよ!

 

もうすぐ冬休み(冬期講習)があります。受験生にとっては最後の長期休みですね。

ここで開花する子も少なくありません。

自信をもって受験会場に向かえるように、、、全力でいこう!

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