まさに職人といった気風を感じさせるほどに成長した生徒の話。
彼は中学1年生の時に初めて会った。
よく頑張る子で、中学1年生の時は前回の時同様、成績上位であった。
最も点数を取れる科目は英語。数学も大したものだった。
中学2年生時点での駿台模試では、8月・11月で英語で偏差値70付近。よく努力をする。
数学では、計算の速さはピカイチ。手がどんどん動いていく。
国語が苦手にしており、中3の夏まではずっと苦しんでいた。
数学も、偏差値60近くまでは行くが、壁を越えられずもどかしい期間が長かった生徒だ。
中1では英語を軸にのびのびと数学・国語を学習していた彼。順風満帆、という言葉がまさにという所だった。
しかし中2に上がり、英語・数学の学習内容が進むと少し異変が起きた。
英語は先行して学習していたから変化はなかったが、
数学の学習内容が複雑になり、更に「駿台模試レベル」の難問に取り組むことになった際に、
思うように数学で点数が取れなくなってきたのだ。
いや、これは正確ではない。
普段の授業では、持ち前の「努力」で、学んだものを何とか習得し、小テスト・月のテストなどでは常に上位にいた。
しかし、模試でなかなか思うように点数が取れなかったのだ。
とはいえ、中2の間はまだ踏ん張る。手堅い所を取れれば、悪い点数にはならない。
しかし彼が見ている世界は「最難関校」だった。
偏差値60を簡単に取る生徒が横にいると、彼の気持ちも変わる。
「もっと取りたい。」
中3に上がるころには、「目の色」が完全に変わっていた。
何としても出来るようにする。上を常に見続ける。
英語の質を落とすことなく、数学に猛烈に取り組んだ。
かなりハイレベルな難易度、そしてたくさんの量を、こなしていった。
彼の力は、日に日に磨かれてゆき、夏を境に更に飛躍した記憶がある。
(中3の夏には全20回+αの総合演習を行った。)
「解ける・分かる」
これまで、解くことでいっぱいだったものが、
連日の、解く→解説を聞く→徹底的に直す→すぐに次で生かす(解く)→・・・
によって磨かれた彼の感覚は、普段の授業でも発揮されていた。
しかし…
なぜか、、、、、
模試でそのままの結果が残らない。
指導し、直接見ていた感覚で言うと、彼の偏差値はざっくり65辺りを出せていい。
なぜか、55前後で止まってしまう。中3、10月駿台模試でもまだ・・・。
夏明け(9月頃)だったか、彼と1対1で話をしたときに、
「私が見る限り、駿台模試であなたは60を下回ることはないと思うんだけど、何かあるのかな?」
「先生…実は、僕、いつもは大丈夫なんですけど、模試の試験時間、いつも手が震えちゃうんです…どうすればいいでしょうか。。。」と彼が言う。
彼は、とても繊細だった。緊張で、いつもの力が出せていなかったことを、勇気をもっていってくれた。
私は「いつも通り、しかないな!あなたは普段から結果を出してる。勉強の中身も自信を持っていい。次の模試は、変に点数を取ろうとするよりも、普段の授業の中だと思って挑んでみてごらん。あなたは、それだけすごいんだ。」
こんな感じの事を言ったと思う。
彼は、真面目。ド真面目。そして頑張り屋さん。普段のテストもとても出来ていた。
だからこそ、いい結果を残そうと意気込んで、失敗してしまっていたのだろう。
10月の模試では、数学は9月よりも偏差値が5伸びた。とはいえ、彼は9月に大失敗していたので満足は出来ない数値。
なんと、国語が伸びた。(数学でアドバイスしたはずなのになぜだ!!笑)
これまで偏差値50を上回ることの方が少なかったのが、60以上を取る。
緊張が、解けたのだろうか?
終わった後、話を聞くと一定の手ごたえを感じていたようだった。
目を見張るのはこの年受けた最後の11月の模試。
数学で、偏差値70オーバーを叩き出す。これを・・・待っていた!!
彼は晴れやかな顔だった。
「先生、手、震えませんでした。」「おう!取ったなぁ!!」
普段の努力を知っているし、力も知っている。思うような点数を取れないもどかしさも分かる。
だからこそ、こちらもすごく嬉しかった。
凄いところはこれだけじゃない。
彼は、中3の8月~11月の間、英語の偏差値を一切落とさなかったのだ。
常に70前後の学習の質を維持し、その上で他教科を引き上げていった。
最後の国語も、偏差値60には惜しくも届かなかったものの、一定の成果を挙げた。
不安や緊張を跳ね除け、最後の最後で大きな成果と手ごたえと成果を得た彼に怖いものはなかった。
入試本番、試験会場に送り出す際に、不安そうな表情は見えない。自信に溢れている。
「いつも通りやれば大丈夫。」
そんな彼は、
早慶全勝・2校の特待合格
を持って、入試を終えた。
はじめに「職人気質」と書いたのは、
勉強している際、その集中力が物凄かったのだ。
一心不乱に問題に挑む。どんなことでも習得してやろうというその勢いに、
「まるで職人だ…」と、教員の誰かが呟いたのがきっかけ。
ドアの開く音に動じない。当てられる前に準備が済んでいる。取り組む量がすごい。
模試では、毎回思い描くような点数は取れないかもしれない。
しかし、諦めることなく「自分や周りの人(先生とか親とか!)を信じよう」。
指導している先生はよく知っている。あなたがどれだけのものを持っているかを。
どこで点数が爆発(良い意味で)するか、タイミングは人に違うんだ。
試験で思ってもみないミラクルが起こるかもしれない。
最後まで、頑張っていこう!
(最後の最後の最後にミラクルを起こした生徒のストーリーも、書いていきたいと思う。)